Mr.ハードボイルド
彼女の憂鬱


俺の名はトミー。
しがない、なんでも屋さ。

店の用心棒から園児の送迎、はたまた要人の護衛まで、依頼されたものはなんでもこなす、なんでも屋だ。

それにしても、男の朝飯は、バターをたっぷり塗ったトーストと、粗挽きにしたモカの豆から入れたコーヒー、それに、かたゆでたまご(ハードボイルド)にかぎるぜ。
間違っても、俺は、白米にみそ汁、それに、納豆などという朝飯は食わない。


オフィスのドアが開いた。
甘い香水の香りを漂わせながらニーナが現れた。

「おはよう、トミー」

「あぁ、おはよう、ニーナ」

相変わらずイイ女だ。

かれこれ、この『オフィスHBサービス』をニーナと開業して2年になる。
ここを開業する前に俺はものすごい事に遭遇していた。
当時の俺はキャバクラで働くニーナにゾッコンで食費を切り詰めてキャバクラ通いをする、ダメサラリーマンの典型だった。
そんな俺が、一晩のうちに金持ちになったんだ。
なけなしの金で買ったtoto BIGが当たりやがったんだ。
しかも6億円もな!
やっぱり、神ってのはいるのかね?

それでもって俺は、会社を辞めて、自分でなにか起業しようと思った。
どうせなら、自分が惚れた女と一緒に仕事がしたいと思い、ニーナのもとへ通って通って通い詰めて、やっとの思いでニーナを口説き落として、俺の相棒になってもらった。
その条件、月に50万の固定給、それに楽しく、胸を張ってイイ職場だって言えること、あと、俺からの解雇はしないってものだった。
今じゃ、すっかり彼女のペースでオフィスを操作されているが、それも悪くない。
因みにニーナはtoto BIGのことは知らない。
だから、たまに俺の資金繰りを疑問に思うこともあるようだがな。

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