Mr.ハードボイルド


なにから話せばいいのやら。

俺は午前中に山内のオヤジさんの仕事の手伝いを依頼されていた。
週に1回くらいの割合で定期的にある依頼だ。
まぁ、週に1回、ダンナが市場へ行ってる日の外回り仕事を代わりに行うってだけなもので、ちょっと前にやってたことだから、勝手知ったるものだ。
その仕事をしている最中、常連のご老人がアパートの前で動けなくなってるのを、俺は見つけた。
どうも、腰をやっちまったらしく歩けないってことだった。
仕方ない、俺は婆さんをおぶって2階の部屋まで連れて行った。

日頃の運動不足かねぇ?
俺までなんとなく腰を痛めちまった。
ったく、情けねぇ………

そんな状態のまま、俺は次の依頼の『BAR マダムローズ』の改装の手伝いに行った。
改装といっても、業社を呼ぶほど大袈裟なものでもなく、ローズママをはじめ、従業員と、一応依頼されたという形(ツケの代わり)で呼ばれた俺とでできる程度のものだった。
まぁ、考えてみりゃあ、見た目はどうであれ、全員男なんだから、力はありそうだな。

でも、『心は乙女』の彼らは、なかなか手強くて、なにかってぇと力仕事なんかは俺にやらせやがった。
俺も痛めた腰に鞭打って頑張りましたよ、一応仕事だからな。

でもね、ハシゴにのって天井の照明を換えてる時にな、まさかハシゴごと倒れるとは思わなかったよ、ホントに。


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