すきだから
「香苗ちゃんがそうなったのも、アイツのせいだな。でもね、香苗ちゃんに魅力がなかったからじゃない。アイツは何があっても自分の近くにいてくれる、その奢りがあったからだ。現にアイツが別れ話をした時、アイツは香苗ちゃんを見下したような態度をしなかったか?」

的を得た発言に、私は目を見開いて驚く。

「ど、どうして分かるの・・・?」

「やっぱりね。なんとなくだけど、アイツの行動を見ていて分かったから。相手を不安にさせて自信を無くさせて、追い込んで・・・。別れ話をしたのも香苗ちゃんの気持ちを試したかったんだろうね。でも香苗ちゃんはその別れを承諾した。アイツ、相当慌てたと思うよ」

ククク、と笑いながら千歳は言う。

「香苗ちゃんはそんなに女々しい女じゃないのを分からなかったのかなぁ?普通なら引くよね?そんな態度で別れ話されたらさ」

「そ・・・そうなの。雄太のその態度で、あんなに好きだった気持ちがさぁっと冷めちゃって。もういいや、って」

「ずっと近くにいたのに、香苗ちゃんの性格すら把握出来なかったアイツはバカだよね。香苗ちゃんも、あんな男の為にずっと悩んで、自信を無くして・・・。バカだよ」

千歳は私の頭を軽く撫でる。
触れられた部分がとても熱くなった。

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