平安異聞録-お姫様も楽じゃない-



術を使いたいけれど、人に向けるのが怖い。酔っているけど、男だから力が強い。



体術も女房たちにばれないように、こっそりとその道の大家に手解きをしてもらったけれど…。



身体が固まってしまって、全く言うことを聞かない。



だから絶対にこの酔っぱらいを打ちのめすなんてことは無理。



自慢の長い綺麗な髪を、こんな奴に掴まれたことが悔しい。



こんな奴に勝てないことが悔しい。



なによりも女だってことが悔しい。



「帰る家がないのなら、私の家にくるがよい…可愛がってやるぞ〜」



誰がアンタみたいな酔っぱらいに可愛がってもらおうなんて思いますか!!



それに、アタシの家はきっとお前なんかより絶対に立派な家だ!!



心の中では、こんなに強気で言い返せるのに実際に口から言葉が出てこない。



足も根が生えたみたいにその場所から動かない。



被衣に酔っぱらいの手が掛かる。



「顔を見せてみよ。悪いようにはせぬぞ。」



だから、それこそ凄く悪いことなのよっ!!



誰がアンタなんかに顔を見せるもんですか!!自慢じゃないけど、お父様とお兄様と弟達以外とは刺しで話したことないんです!!



目に涙が溜まる。



こんなヤツに顔を見られるなんて。



もうだめ───



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