そこはかな秘密


エレベーターで自分の会社の入っているフロアで降りる。商業施設の上にあるオフィスフロアは、まだ明かりの灯る部屋もあって、なんだかほっとした。


高い階からの夜景はキラキラしてまぶしいくらいだと思ったら、ぽたりと雫が手にかかった。


その雫の出所を探して顔に手をあてたら、涙が頬を伝い顎から流れ落ちていた。ぽたぽたと流れ落ちた雫は、胸に落ちて冷たくなるほどで、いつから泣いていたのか自覚していなくて恥ずかしくなった。


暗いオフィスから見下ろしている窓をよく見てみたら、ヒドい有り様で泣いている女がいた。


自覚したら、余計に泣けてきた。


今なら、ここでならどれだけ泣いたとしても許される気がした。


一瞬でたがが外れて、さらに涙をあふれさせる。父や母にとってのいい子である必要もないし、彼にとってのいい彼女であることもない。


あたしは、自分の好きなように泣いてもいいんだ。


こらえることなく、声を張り上げた。喉が潰れたっていい。
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