我那覇くんの恋と青春物語~桜沢紗希編~
「駄目だよ。そんなこと言ったら・・・会いたくなるから」


耳から受話器を外し、呆然としてしまう。



こんな悲しそうな彼女の声を聞いたのは初めてだ。

出会ってから、いつだって・・・転校する前日だって明るかった彼女。



彼女がどれほどの辛い思いで転校したのか。

それを我慢して乗り越えて、向こうの学校でまた明るく振る舞ってきたのか。



この悲しい声が、それを物語っている。


「ごめんね。わがままだって分かっている・・・」


これ以上、彼女に辛い思いをしてほしくない。


「俺だって会いたいよ」


その気持ちが言葉に乗り移った。


「会おうよ!」


「ありがと。その言葉だけで嬉しい」


会うにしても学校が終わってから向こうに行っても、全然時間が足りない。



何か、何か良い方法はないのか。


「・・・決めた。私、明日そっちに行く」


「えっ」


「こっちは卒業式前日まで、今は自由登校だから」


「いいの?」


少し言葉に詰まる。



やはり、無理をしているのだろう。


「平気!もう、決めたから」


彼女の声は、いつもの明るい声に戻っていた。



そのとき、あの頃の彼女の笑顔が頭の中に映し出された。
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