我那覇くんの恋と青春物語~桜沢紗希編~
「あのね・・・まず、昨日はごめんなさい」


お互いに座り、しばらくの間沈黙が流れていたが、彼女がそれを切り裂いた。



謝らなければいけないのはこちらなのに、それを制するように彼女は続ける。


「約束・・・破っちゃって・・・」


これ以上、彼女を謝らせるわけにはいかない。



今度は逆に、こちらが彼女を制するように口を開いた。


「そんなこと、気にしなくてもいいよ。さくらさんにだって、都合があっただろうし・・・それに、俺が我がままばっかり言っちゃったから、俺のほうこそごめん」


また、沈黙が訪れる。



昨日のことがあり、二人とも簡単に口を開くことができない。

一時間しかないと思えば思うほど、余計に言葉が見つからなくなっていく。


「やっぱり、あなたって優しい・・・前にも言ったけど、全然変わってないよ」


「・・・」


「でも、優しすぎるよ・・・私、あなたの優しさに甘えてばかりで・・・駄目だよね、こんなんじゃ。今も昨日のこと、何も聞かないでいてくれるし」


「それは・・・何があっても、俺の気持ちは変わらないから」


ずっと抱き続けた気持ち。



だけど、気付くことがなかった気持ち。



今ははっきりとしているこの気持ちは、何があっても変わることなどない。


「俺は・・・さくらさんのことが・・・」
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