ロールキャベツは好きですか?

side:祥吾


桜の葉が目の前を横切って、落ちた。
あと一月もすれば、マフラー無しでは辛くなるだろう。

桜はもう、冬支度を始めている。

外回りから帰社する途中で、俺はため息をついた。

脳裏にあの微笑みが張り付いたまま、離れない。

今にも泣き出しそうな、そして、何かを諦めたかなような、無理矢理作った笑顔。

主任のあんなに下手くそな笑顔を見たのは初めてだった。

あのとき、俺は杏ちゃんを抱っこしていた。
そして、『子供が好き』だと言った。

大家さんのひ孫さんである杏ちゃんが、主任の姪っ子だと知って、随分と驚いた。
主任も俺と家族が知り合いであることに驚いていた。

それから、何があったんだろう。
俺が杏ちゃんを抱き上げた瞬間、主任の顔が曇った。

主任は何かを抱えていると前に感じた。
その思いはますます濃くなる。

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