セカンドパートナー

『私、詩織さんと友達になりたいんです』

 秋月さんの言葉には、それなりの理由があるのではないかと思ってしまう。

 こんな風に受け止めてしまうのはきっと、誰にも言えないやましい気持ちが私にあるから。

 並河君と長年メールでやり取りしていたことや、個展について漏らさず報告されてきたこと、ただの同級生以上の仲だということ、全部、秋月さんには言えなかった。言いたくなかった。

 並河君との間に起きたことは全て、他の人に踏み込まれたくない二人だけの世界にしておきたかったから。


 まっさらな友情なんて、ウソ。

 私は、恋のような友情を並河君に感じていた。あの頃だって、本当は……。


 今さら気付いたところでどうにもならない。私には優人がいる。子供はおらず色々と問題もあったけど、この十年、夫婦二人で楽しく穏やかにやってきた。

 心のまま恋愛して許される立場ではない。

 分かっているのに、現状に反し私の心は高校生の頃のまま止まっているみたく、並河君への想いで溢れていた。赤く色づいていく。

 悲しいほど秋月さんの存在に困惑している。

 並河君のことで心を揺さぶられるのは、後にも先にもない。高校時代だけだと思っていたのにーー。

 並河君への感情。「友情のような恋」を「恋のような友情」とすり替えていただけだった。









 ーー恋のような友情(終)ーー

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