知らない貴方と、蜜月旅行
「やだなぁ、佐野ちゃん!俺らは仕事で一緒だったんだよー。誰が好き好んで、こんな鬼みたいな人と一緒にいたいって思うんだよー!」


陽悟という男はケラケラ笑いながら、テーブルをバンバン叩いた。そ、そこまで大笑いしなくたって…。ほら、なんか隣からダークなオーラが感じる!


「陽悟…てめぇ、マジでキレんぞ?わかってんのか?」
「……あ。やだなぁ、蒼井さん!冗談が通じないとか、そんなんじゃ人生うまくいきませんよー?」


どこが冗談なんだろうか。あんなにケラケラ笑って、しかも〝鬼みたい〟まで言って。それで〝冗談でした!〟なんて言ったって信じるわけないじゃんね。


「とにかく、お前もう出て行け」
「えっ、あ、はい…」


そんなうるさい陽悟という男を無視するように、蒼井という男に〝出て行け〟と言われ、せめて顔だけでも洗いたかったな…なんて、思いながら立ち上がった。だけどそれはすぐに、蒼井という男の言葉によって立ち止まることになった。


「お前じゃねぇよ」
「え?」
「陽悟だ」


思わず聞き返しちゃったけど、ハッキリと〝陽悟〟って言ったよね…?私、今すぐ出て行かなくてもいいんだよね…?


「えー!なんでですかぁ〜」
「なんでもクソも、自分家があんだろうが。俺の家に入り浸んな」
「蒼井さん、ヒドイですよ。やっぱり、鬼!ケチ!」
「なんとでも言え」


陽悟という男は、予想通りの反応というか、なんというか…。彼って、わかりやすいよね。でも、ぶぅぶぅ言いながらも笑ってるから、楽しんで会話してるんだろうなぁ。


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