知らない貴方と、蜜月旅行
「いたよ」
「え?」
「あいつと別れてから、数人いた」
「……うん」
「嫌いになったか、俺のこと。軽蔑したか、気持ち悪って思ったか?」


そんなことない。嫌いになんかなれない。軽蔑なんてしてない。気持ち悪いなんて、思わないよ。


「ううん、私は今の吏仁が好きだから。そんなこと思わないよ」
「………」
「ただ、嫉妬はしてるかも」
「嫉妬…?」
「だって私には未知の世界だもん。吏仁がどんな風に愛してくれるのか、私には分からないもん。私は今、吏仁の奥さんなのに、なんか一番吏仁のこと知らない気がする…」
「紫月…」


こんなこと言うなんて、私は子供?でも言わなきゃ分からないこともあるよね…。我慢することも大事だけど、話すことも大事だよね。


「なぁ」
「ん…?」
「キス、したい」
「……ん、私も」


ふ、と会話が途切れ、少しの沈黙があり、吏仁がゆっくり近付いてくると、私は当たり前のように目を瞑る。


そして、吏仁の唇が重なる。一度離れると、目が合って、だけどすぐに角度を変えて、また唇が重なる。


何度かその唇に攻められていると、吏仁の熱い舌が私の舌に絡みついてきて、お互い、どんどん息が激しくなり、もっともっと…と、欲しくなる。


「やべっ、とまんなくなる」
「……っ、」
「続きは、怪我が治ったら…な?」
「……うん」


まさかの、おあずけに、こんなに落ち込むとは思わなかった。吏仁が欲しくて欲しくて、たまらないのに、もらえないなんて、つらすぎるっ。


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