知らない貴方と、蜜月旅行
「えー。それは無理ですよー。だって俺、彼女しか部屋には入れない主義なんでー」
「お前、俺だってな!」
「はい?〝俺だって〟なんですかー?」


あー、イライラするっ。こいつと、まともに喋ろうとしたら、疲れちまう。とりあえず、女を陽悟に押し付けると、俺は歩き出した。


「えー、いいんですかー?」
「……」
「ねぇ、蒼井さんってばぁ!」
「……」
「この子、死んじゃいますよー?」
「……」
「あー、誰かにお持ち帰りされて、洋服も下着もビリビリに破かれて、ただヤルだけヤって捨てられて、妊娠なんかしちゃって、彼女生きる希望も失くして、自殺しちゃうかもー」


あいつ、なにがしてぇんだよ。ふざけんな。知らねぇ女が、どうなろうが俺には知ったこっちゃねぇんだよ。


「いいんですかー?彼女を助けなかったこと、後悔しちゃいますよー?」


だけど、陽悟の言葉に俺はため息を吐くと足をとめ、クルリと振り返った。


「陽悟」
「はい?」
「はぁ…。その女、連れて来い」
「イエッサー!!」


なにが〝イエッサー〟だ。満面の笑みで、コッチに走ってきやがって!つーか、それでも起きねぇ、この女。どんだけ飲んだんだよ。


「じゃあ、行きましょう!」
「は?行くって、どこにだよ」
「やだなぁ、決まってるじゃないですかー!蒼井さん家ですよー!」
「なんでお前まで来んだよ」
「えー?だって、この子が起きたとこ見たいじゃないですかー!」


なら、お前が連れて帰れ!と、言いたいとこだが、また振り出しに戻っちまう。めんどくさくなった俺は、もうなにも言わず、女は陽悟に任せ再び歩き出した。


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