知らない貴方と、蜜月旅行
「そういやさ、俺、お前に俺の年言ったか?」
「……そういえば、聞いてない気がする」
「はっ、年も知らねぇ男と、よくホイホイ籍入れたな?」
「なっ…!」


ほら、すぐコロコロと変わる。さっきまで暗い顔をしてたのに、俺が仕掛けると眉間にしわ寄せて怒った顔を見せる。


「37だ、好きだろ?年上の男」
「自分で言う?普通。まぁ、嫌いではないけど…」


今度は、呆れた顔を見せ、少し照れた顔も見せてくれる。本当、見てて飽きない女だな。


「矢島梨々香」
「え…?」
「RIRIKAの正体。〝やしま りりか〟だ」
「ふぅん…そう」


久々に、あいつの名前を言った気がするな。それにしても紫月は自分で聞きたいと言ったくせに、なんでおもしろくなさそうな顔すんだか。


「あいつとは、30の時に付き合って33の時…紫月と同じ年の時だな。プロポーズしたんだ」
「そう…」


梨々香とは、飲み会の席で出会った。いわゆる、合コンみたいなもんだ。別にすげぇタイプってわけでもなかったし、向こうからグイグイ来たわけでもない。なんとなく友達から、大切な人に変わったんだ。


「で、お前と同じ」
「同じ、って…?」
「性別は逆だけど、指輪渡して、結婚承諾してくれて、式場決めて、当日ドタキャン。あぁ、当日ドタキャンってのだけ違うか」
「え?待って、待って。吏仁も相手がいなくなっちゃった、の…?」
「あぁ」


当日ドタキャンって、今思えば、ひどいことしてくれたよな。まぁ、親戚中が集まっての式ではなかったから、そこまでの迷惑はかけなかったが。


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