Green eyed monster《悲しみに、こんにちは 例外編》


12月30日

クリスマス以来会ってなかった先輩を駅に呼び出した


「せんぱーい!こっちです。」


楓の木のしたで入家 皐月は
ダッフルコートを着た芹沢 ユズキを待っていた。
彼女は祖母由来のブロンドを首の後ろで一つ縛りをしていた。



「入家ーくん、まったく。
いきなり呼び出すんだから!
今、年末なのよ!」


大晦日を翌日に控えた休日
人通りは多く、特に小さな子を連れた家族連れが目立つ。

「先輩、ご飯食べました?」


「まだだよ、急いできたの」


入家 皐月の冬休みは学校の課外と塾で忙しい毎日だった。


「何処か入ります?」

私は首を横に振った。

「ううん、あんまりお腹減ってないし、
それに、今日あたりは何処も混みそうだから。」



「そうすか、それじゃあ行きますか?」


入家君が黄色で縁取りされた切符を差し出した。


「えっ、電車使うの?あれっ、何処に行くんだっけ?」


「まあ、今日は俺に付いてきて下さい、ね」


入家君は私が切符を受け取らない為か、
無理やり私のポケットに切符を入れた。



「あっ、待って切符代!!」


「今日は俺の我儘なんで、それくらい出させて下さい。」


入家君が私のコートの裾を掴み
改札口に向かった。

白い粉雪が彼の肩に薄く積もってあったのに気付いたのは
駅のホームに出てからだった。


故意に私は例のマフラーを忘れたためか
首元がひんやりと寒かった。

降り積もる粉雪は地面を薄化粧に変え、
私たちの足跡だけが残った。
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