強引同期と恋の駆け引き
 № 4 


 ◇ ◇ ◇




ビュッフェ形式の二次会は、主役が二十代半ばのカップルということもあり、やたらと明るく賑やかだった。
ほんの何歳か年齢層が下がるだけでこうも雰囲気が違うものかと、ジェネレーションギャップを思い知らされる。

ついさっきも、新婚の二人に「チューしろっ!」とはやし立てる主に新郎側友人一同の要求に、照れながらも嬉しげに応じる二人を目の当たりにすれば、もうお腹いっぱい。
私は甘ったるい空気にもたれそうな思いで名簿を手に、三次会の出欠の確認をとるため会場を彷徨いていた。

「片倉さん、お疲れっす!」

急に後ろから声をかけられて振り返ってみれば、お皿一杯にごちそうを載せた佐藤くんが、ニコニコと立っている。

「ここの料理、すげー旨いっすね」

そうなのよ! 私は披露宴ですでに許容量を大幅に超えるだけ頂いたから、この場ではほとんど手をつけていなかったけど、二次会から参加の彼には遠慮が無い。

「いっぱい食って、元取らなくっちゃ」

食べ放題に来た女子大生みたいな台詞でローストビーフを頬張る彼の手元に、ふと目が留まる。

「なにそれ? そんなのあった?」

ガラスの器に入った、小豆と抹茶のムースが二層になってその上には求肥をくりぬいた薄紅色の桜の花びらが乗せられた、和洋折衷のスイーツ。
春を感じさせるその色合いだけでも十分に楽しめる逸品に、目が釘付けになった。

「へへ。旨そうでしょう? 限定らしくって、これが最後だったんですよ」

「えっ、もう無いの?」

料理が並ぶテーブルに目をやれば、確かに同じ物は見当たらない。

さっきまでぎゅうぎゅうに詰まっていた胃が、動き出してスペースを空け始める。別腹という言葉はきっとこういうことを指すんだな。

獲物を狙うようにじっと凝視する私に危険を察したのか、佐藤くんはお皿を背後に庇う。
キミには、先輩に譲ろうという尊い精神はないのかね?

なおもジト目で和風ムースから目を離さない私に、無言の圧力を感じたのか、佐藤くんは渋々といった様子のため息をついた。

「一口だけですよ。はい、口を開けてください」

「はいっ?」

その銀色に輝くスプーンを渡してくれればいいんですけど?



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