逃げられるなんて思うなよ?
俺様束縛系なカレ


「うわ、やばい……!」


朝起きて時計を見た瞬間、私は絶望した。

目覚ましアラームをかけ忘れていたのだ。
昨日の夜、家に持ち帰った仕事を遅くまでやっていたのが災いしたらしい。


「最悪!」


現在、午前8時20分。
あと40分で会社に入らないと、遅刻確定だ。

A駅まで徒歩5分、電車で15分、N駅から会社まで徒歩10分。


「……死ぬほど急げば、なんとかなる、か?」


私は超特急で歯を磨き、かろうじてファンデーションだけは塗り、起床から10分で家を飛び出した。


A駅のホームについたとき、ちょうど電車が滑り込んできた。
寝坊しちゃったけど、ツイてる。
この分なら、なんとか間に合う、かもしれない。


N駅に着くと、飛び出すように電車を降りた。
人ごみをかきわけてホームの階段を駆け上がり、自動改札の順番待ちをする人の列に並ぶ。

腕時計を見ると、8時50分。
計算上、ぎりぎりセーフだ。

でも、列がなかなか進まない。
身を乗り出すようにして前を確認すると、もたついているおじさんがいた。
どうやらICカードをタッチしてもエラーになるらしい。

ちょっと、何もたもたしてるのよ! と私は心の中で悪態をつく。
遅れたらどうしてくれるの!?

おじさんが悪いわけじゃないんだろうけどイラついてしまう、心の狭い私。
だって、焦ってるんだもん!
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