あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 いつもより遅いメールは小林さんの仕事の忙しさを感じさせた。それでも会いに来てくれるという気持ちが嬉しい反面、今からのことを考えると逃げたくなった。それでも私が小林さんに自分の気持ちを素直に伝えるということは精一杯の誠意だった。


『私はいいですが、小林さんは大丈夫ですか?』


『うん。大丈夫。急いで行く』


『待っています』


 そうメールを返すと私はソファに座りクッションを抱きしめた。じっと、時計を見ながら小林さんが来るのを待つしかなかった。そして、小林さんがマンションのインターフォンを鳴らした時に私の心臓は飛び跳ねた。


『美羽ちゃん。小林です』


『はい。今、開けます』


 小林さんが私の部屋まで上がってくるのに掛かる時間は数分のことだろう。そして、私は今までの人生で一番辛いことを口にすることになる。そんなことを思いながら私は玄関のドアの前に立っていた。どうしてもリビングに居るというのが落ち着かなかったのだ。


 ピンポーン。


 いつものようにチャイムが鳴り、私が玄関ドアを開けるとそこには驚いた顔をした小林さんの顔がある。チャイムを鳴らしてすぐに開いたから驚いたのだろうけど、すぐにいつもの微笑みを浮かべた。仕事で疲れているはずなのにそんな雰囲気は感じさせない。



「美羽ちゃん。こんばんわ。遅い時間になってしまってゴメン」

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