あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】

フランス一年後

 時間の流れは優しく、そして、確実なものだった。


 フランス研究所に配属されて留学期間の半分、一年の月日が流れていた。大変なことがなかったとは言わないけど、それでも何とか乗り越えて来れたのはキャルと折戸さんの存在だった。二人が居なかったら私はもっとツマラナイ生活を送っていたのだと思う。


 私の隣の部屋に折戸さんが引っ越してきてからは、キャルの部屋で三人で飲むこともある。最初は三人で飲んでいても、結局はキャルが先に寝てしまって、私と折戸さんで片づけをしてから自分の部屋に戻るというものだった。そして、今日も二人でお皿や床に転がるワインの瓶を片付けてからキャルの部屋を出たのだった。


「美羽ちゃんもキャルみたいに寝てしまうくらいに飲んだらいいのに、次の日に起きれないくらいの二日酔いを経験するのもいいと思うけど」


「二日酔いは苦手です」


「みんな苦手だよ。でも、キャルは相変わらず懲りないね」


「楽しそうですから」


「確かに。キャルは楽しそうだ。じゃ、おやすみ。蒼空によろしくって言っておいて。今日も連絡するんでしょ」


「はい。今からメールします」


「美羽ちゃんは本当に真面目だね。あ、蒼空にそろそろフランスに遊びに来いって伝えといて」

「はい」

「じゃ、おやすみ」


「おやすみなさい」


 折戸さんは相変わらずに綺麗な微笑みを残してから自分の部屋に戻っていく。そんな後ろ姿を見てから私も自分の部屋に入るのだった。二日酔いをするほどではないけど、ワインを飲むことが多くなった私は確実に日本に居る時よりもお酒に強くなっていた。


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