あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】

好きという気持ち

 名前を呼ばれるだけで、私の心臓は大きな音を立てた。見上げると、私が会いたくて会いたくて仕方なかった人がいる。電話とメールだけで寂しかった。でも、今、目の前には小林さんがいる。サラッとした髪は何時間も飛行機に居たとは思えないくらいにサラサラと風に流れ、時期的なものもあるだろうけど、陽に焼けた肌は小林さんの男らしさを倍増させた。一年という月日は小林さんをより一層魅力的な男性へと変化させていた。


 でも、優しい瞳は変わってなくて、心臓が痛くなるくらいにドキドキが止まらない。動いたのは心ではなく身体だった私は小林さんにギュッと抱きつくと、その胸に頬を寄せた。少し早めに打つ小林さんの胸の鼓動を聞きながら目を閉じた。シャツ越しに感じる温もりが愛しく感じた。


「私も会いたかった。本当に会いたかったです」


「え?み、美羽ちゃん。ちょっと…ここ空港」


 小林さんは背中をポンポンと撫でてくれ、まるで落ち着けと言われているみたいで…。


 見上げると顔を赤く染めた小林さんの顔がそこにはあった。自分の行動を思い出し、耳まで真っ赤になってしまうのを感じずには居られない。久しぶりに会ったからといって、日本での私しか知らない小林さんにとって、『私がいきなり抱きつく』というのは衝撃に他ならないだろう。


 雑踏溢れる空港のロビーで私と小林さんはお互いに顔を真っ赤にしたまま見つめあっていた。
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