俺様御曹司と蜜恋契約
「……本当だったんだ」

思わずポツリと言葉が漏れた。すると私のその声が聞こえたのかテーブルを拭いていた母親が手を止めて振り返る。

「何か言った?」

「えっ?…ううん」

何でもないよ、と笑って誤魔化せば母親は再び手を動かし机の上を拭き始めた。


……本当だった。

本当に商店街の再開発がなくなった。

私が葉山社長と話をしたのが今日の午前のこと。

まさか本当に白紙に戻してくれたなんて。

しかもその話をした当時に。

ということは……。



『俺の恋人になれば商店街から手を引いてやるよ』



葉山社長との取引を思い出した私は背中にぞぞぞっと冷たいものが走った。


母親には言えない。
ううん、誰にも言えない。

商店街の再開発を計画していた企業の社長と私がそんな取引をしたなんて…。
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