俺様御曹司と蜜恋契約
突然聞こえたお腹のなる音は、私ではなくて葉山社長の方から聞こえてきて。

その音に閉じていた目を開ければ、葉山社長のおどけるような顔が飛び込んでくる。

「なんか飯でも作って?」

「…へ?」

その言葉に一気に体の力が抜けた。

私の顎を掴んでいた葉山社長の手が離れていき自分のお腹をさすっている。

「腹減ってんだよ。ほら、キッチンそこだから何か適当に作って」

「えっ。私が作るんですか?」

「お前以外に誰が作るんだよ」

「……」

そんなこと突然言われても。

もしかして『味見』ってそういう意味……?

「お前この前言ってただろ。実家が商店街で食堂やってるって」

「え?…はい、言いましたけど」

「食堂の家の娘なら料理くらい作れるだろ」

たしかにお店が忙しいときは小さい頃から手伝いをしていた。食堂で出している料理なら全て教えてもらってあるから作ることはできる。それに料理は好きだから普段からよく作ってはいるけれど。

「ほら、早く作れって」

命令口調なその言葉。

「わ、分かりました」

若干の戸惑いを残しつつ、ここは大人しく従うことにした。

この部屋に入ったときから気になっていた立派なアイランドキッチンへ向かえば、そこには様々な料理器具が並べられていて、たくさんある調味料の中には初めて見る香辛料も置かれている。

「すごいですね、このキッチン」

もしかしたらうちの食堂よりも料理道具や調味料が充実しているかもしれない。

「普段からお料理するんですか?」

いつの間にかソファに座ってくつろいでいる葉山社長に声を掛ければ「たまにな」と返事が戻ってくる。

そこでふと思い出した。

そういえば葉山社長のお母様は有名な料理研究家だった気がする。名前はたしか葉山今日子(はやまきょうこ)で、旦那さんは去年亡くなった葉山グループの前社長。

お母様が料理研究家だから息子の葉山社長も料理が好きなのかもしれない。

お母さまの美味しい手料理を食べて育ったであろう葉山社長に私の手料理が果たしてお口に合うのかは分からないけれど。

さて、何を作ろうかな…。
大きな冷蔵庫を開けば数種類の食材が入っている。

簡単に作ることができて、すぐに食べられるものがいいはず。

うーん、と考えながらキッチンを見渡せばまだ開封されていないフェットチーネを見つけた。


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