唯一愛した君へ





あたしの体はいつのまにか立ち上がって、無意識なのに玄関まで駆け出した。



心臓を押さえながら、呼吸が数歩だけで上がってく。




あの笑顔が、あたしの名前を呼ぶ――…




ドンッ!


その音で我に帰ると、目の前にシンの手があった。
その手の拳が、ドアを強く叩いてた。



『どこ行くん?』


顔を上げると横向きのシンの顔があった。



『い、かないと…!鷹巳のとこ行かないとっ!』


久しぶりに口にした言葉に、なぜか涙が出そうになった。



『行ってどうするん?眠って動くことないあいつに話しかけるわけ?』


空虚、そんな目をシンはしていた。



『それでもいい…逢いたいの……』



この衝動が、止められない。

一目でいい…
一目でいいから…
あなたに逢いたい……。

コレハナニ――?





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