唯一愛した君へ





雨が止んだのか。


そう思って顔を少しだけあげると、あたしの上には傘がささっていた。

見知らぬ、黒い傘。


そして筋肉がうっすらついた、腕が見えた。


一体誰がこんなことをしてくれているのだろう?

もしかして……


期待したけれど、やっぱり違った。




誰もいなくなった大雨の中、
一人泣いていたあたしに黒い傘をかけてくれた。



一人ぼっちの世界にぽっと光りが灯ったような……







それが彼との、出会いだった。






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