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しかし、母はクスッと笑ったのだ。

「クソのことをクソって言って何が悪いの?だいたい、もうこの人は私の子供じゃないわ。高校の授業料も払うのをやめます。」

「そんな…っ!」

「じゃあ選びなさい!今なら選択肢を2つ差し上げます。綾瀬の家に戻り後継者としての教育を受けるか、家を出るか。」

言葉が出なかった。

私の居場所はみんなのいるシェアハウスなのだ。

この家ではない。

でも、私が家を出れば美音への当たりは強くなるに決まっている。

今まで分散していたものが1つになるのだから。













どうして決められないのだろう。

私は家に戻らなければならないのに。

なぜyesと言えないのだろう。

そのときだった。

「もうやめて!」

近くにある階段で降りてきた。

「お姉ちゃんはそんなこと考える必要なんてないよ?せっかくあの場所を見つけたんだ。戻りなよ。あそこが家だよ?」

「美音…でもっ!そうしたら美音が…」

「私が綾瀬を継ぐ。絶対に投げ出したりしない。その代わりにお姉ちゃんの学費を払って。お願いします!」

美音は母に向かって土下座をしたのだ。

私は惨めな気持ちになった。

何も出来ない私。

妹にこんなことをさせる私。

自分のことさえも決められない私。

なんて無力なんだろう。


母が

「離しなさい。」

と言うと、私と神無月の体は解放された。

「私はその条件をのみます。しかし、何か起こしたときはすぐに花音と縁を切らせていただきます。そのつもりで。」

母はそう言って、男たちを連れて部屋へ戻っていった。

私はすぐさま美音にかけよった。

「ごめんね…何も出来ないお姉ちゃんで…」

頬を悔し涙が流れた。

「ううん。 いいんだよ。私はお姉ちゃんに何度も助けられた。今日だって。助けに来てくれたんでしょ?だから、今度は私がお姉ちゃんを助ける番。お姉ちゃんはお姉ちゃんの道を進んで。」

美音は優しくそう言ってくれた。
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