ビオラ、すずらん、年下の君
スイーツを買ってくれる人はいい人

私の勤務先は小さな人材派遣会社。5階建ビルの1室にある。本社は東京にあって、ここはひとつしかない支店。


毎日、数人の登録スタッフが訪れては、仕事を紹介してもらっている。けれど、このご時世、いい仕事って本当にない。

まず募集しているのが、パートやアルバイトの非正規雇用ばっかりだ。

いい年した大人が、雀の涙くらいの賃金で働かなけりゃならない。


だから、やってくる人は皆なんとなく暗い感じ。
ま、こんな会社に勤めてる私も充分暗いけど。


でも、正社員になれただけでもラッキーだ。
給料は手取りで18万。一応、ボーナス夏冬2ヶ月出るらしいし。

実家暮らしの私には、まあまあだ。


そして、何より気楽なんだ。
うん、気楽が一番。



「やっべー、それって犯罪スレスレじゃんかあ!」


「…失礼ですね。そんなんじゃありません」


パソコンのディスプレイの横から羽田さんが顔を出す。
黒ぶちの眼鏡をくっと人差し指で上げて。

「高校生だろお?佐原さん、捕まるぞ?」


私より10才年上の羽田亮(はねだりょう)さんはワーク・コーディネーター。
(その名のとおり登録者に仕事を紹介する)兼経理担当。

くっきりとした二重瞼が実年齢より若く見える。
とっつぁんぼーや。彼女なしの独身。




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