信号は赤 【超短編】
夏の日





「あ、赤になっちゃった…」


黒い車に運転手は男、助手席は女が座っている。

信号が変わり、黒い車は女のぼやきを乗せて白いラインの手前で止まった。


「別に良いだろ?急いでるわけでもない」

「そうだけど、自分たちの所で赤になるとやっぱり悔しいよ」

「どんな負けず嫌いだよ」


男が笑う。

二人は付き合って二年目で、ラブラブというよりは夫婦みたいだとまわりにも有名なカップルだ。


「負けず嫌いとかじゃないから。なんていうか…」


ちょっとの間があいた。
その瞬間に男が突っ込む。


「なに?」

「…後三キロ早かったら行けてた」

「俺のせいかよ」

「もう、どうでも良いよ。あ、音楽変えて良い?」

「…ダメ」

「なんでよ」

「何でもだよ。にしてもこの信号機長いな」

「中々変わんないね。たまにあるよね、こんな信号機」

「あぁ」


男が返事をした瞬間に、車の中で新しい曲が流れ始める。
最近、流行のラブソングだ。
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