絶対値のゆくえ


「あ、私もある……よっくんに伝えなきゃいけないことっ」



喉が詰まってうまく言葉を発することができなかった。



「おいー、そこラブラブしてんじゃねーよ」



しばらく2人で見つめあっていると、クラスの男子からの冷やかしに邪魔された。


君は顔を赤くしながら、うっせー! と反論する。




『試験終わったら、俺、お前に言うことある』




よっくんが私に何を言いたいのかは、友達からこの前、聞いてしまった。


噂レベルだし、信じられなかったけど。




試験は午前に3教科、昼休みを挟んで午後に2教科。



私は最後の教科が終わるまで、君にバレないようにしなきゃいけない。


試験会場の北高に、私がいないことを。



幸いなことに、私と君の苗字は離れているため、

試験の教室は別になるだろう。



「あのさ、試験の日だけど、私休み時間も集中したいし、終わるまで会わないようにしようね」


緊張しながらそう伝えると、


「なんだそれ。まあ、俺だって午後の社会にかけてるし、お前こそ休み時間とか絶対邪魔しにくんなよ」


と言って、君は私のツインテールを引っ張った。



「あいたたた。本番、頑張ろうね……」



顔を伏せながら、私は君にそう伝えた。





< 30 / 43 >

この作品をシェア

pagetop