不機嫌な恋なら、先生と

そう言ったのは、私だ


「うわっ」

編集部でヒカリさんのげんなりした声が響いた。

「あ、お疲れさまです」と、私が振り向くと、「お疲れさまじゃないよ。顔コケてるけど、大丈夫?」と腰に手をあて呆れたような顔をする。

「本当ですか? そういえば、昨日の昼辺りからご飯食べてないかも。朝も寝坊して」

「はっ? 大丈夫? そんなに食べ損ねる、普通?」と、仕方なくといった様子で、自分のデスクに戻ると栄養ドリンクとおにぎりを差し出した。

「ヒカリさん」

「倒れたら迷惑だから」

「あとでお返します」

「当たり前でしょ」と彼女はぶっきらぼうに言うと、デスクに戻って行った。

今夜は編集部の新年会を兼ねた飲み会がある。

沙弥子さんに言われて、先生にも声をかけてみたけど、仕事が遅くなりそうなのでいけないと返事がきた。そこには、あまり飲みすぎないでと冗談のような一言が添えられていただけだった。

「ということで、皆さんいつもお疲れ様です。今年もGrantを盛り上げていってほしいと思います。期待してるからね。乾杯!」

編集長がビールグラスを持ち、労いの声をかけ、会はスタートした。

二時間ほどで会がお開きとなると、二次会に行く人数をヒカリさんが確認する。数人、一次会で帰ることになったけど、花愛ちゃんが二次会に向かってると言う。

Grantをやめた後も、花愛ちゃんとヒカリさんの交流は続いているらしかった。
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