不機嫌な恋なら、先生と

そのままヒカリさん、編集長、沙弥子さん、私と席を詰めて座っていく。

「あら。あんたまだ生きていたのね。最近見かけないからせいせいしてたのに」

「あたしもなるべくなら、カマさんを視界に入れたくはないんですけどね」

「毒入りハイボールで良かったかしら?」

「隣の美人さんに作ってもらいます」

と、KAMAさんの隣にいたこれまたいかつめなお姉さんである不二子ちゃんにオーダーをすると、「かしこまりー」と、虫歯ポーズを決めた。

火花が飛び会う会話に、ハラハラし始めた頃、花愛ちゃんがやって来た。

「お久しぶりです」

コートを脱いでから、私の隣に座る。相変わらず可愛いくて、お店の中が一瞬で華やいだ。

遅い年始の挨拶と、正月の話をする。花愛ちゃんは実家のある仙台に帰ってたらしく、これ良かったら編集部でとお土産をくれた。

一杯目を半分飲んだころ、ヒカリさんはカウンターで突っ伏して眠ってしまった。

お酒は強くないので、飲み会の時は大体こうなる。そのうち起きるので、放置するというのが暗黙のルールになっているから慣れって怖い。

だけど、こうなると分かっていても着いてくるヒカリさんは、本当は寂しがりやなんだよと沙弥子さんが、私が入社したての頃に言っていた。あのときはピンとこなかったけど、最近はなんとなく分かる気もしなくもない。

KAMAさんと編集長、沙弥子さんが男性の肉体美について盛り上がり始めるから、口を挟まないでいると、花愛ちゃんは、「今日、ここに来る前に本屋に寄って来たんですけど。匂坂先生の本、買ってきちゃいました」と私に話しかけてきた。
< 159 / 267 >

この作品をシェア

pagetop