不機嫌な恋なら、先生と

新作発表会で


オルーの新作発表会の会場は青山にある結婚式で人気のゲストハウスだった。

テーブルの上には春らしい花と一緒に新作のリップやチークが置いてあり、一緒に来たヒカリさんは手に取り、吟味するように見る。

「可愛い。パッケージも変わったんだ」

ケースに描かれた花をくわえた鳥の絵も可愛くておしゃれで、つい手に取ってしまうだろう。

ハンドクリームの横にはお皿があって、丸い茶色い木の実のようなものが乗っている。指でつまんでまじまじと見ていると、沙弥子さんは、近くにいた担当の女性に声をかけた。

「これ、なんですか?」

「これはお茶の実なんですよ」

「へえ。お茶の実。初めて見た」

「お茶って実は椿科の植物で茶の実のオイルって実は古くから日本人の髪や肌の手入れに使われていたものなんです」

だけど飲料の文化が発達するにつれて、実が収穫されることはほとんどなくなってしまったと言う。

「保湿と柔軟効果があるんですよ。試してみませんか?」と、私に勧める。

「あ、はい」

茶の実オイルや緑茶や植物成分を配合したというハンドクリームを手に取り、少量を手の甲に乗せ、なじませるようにするといいですよと教えられたままなじませる。それから甲に触れると、すべすべとした手触りに変わっていた。

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