不機嫌な恋なら、先生と

小さな疑惑


いつものカフェで先生から原稿を受け取った。仕事の話をすますと、「そういえば、この前、遙汰の店に行ったんだって?」と、先生は訊いた。

「うん。友達と行ったけど、雰囲気のいいお店だったよ」

「そっか。あいつ、ちゃんと働いてるの?」

「うん。真面目に働いてたよ。一緒に行った友達は遥汰くんのこと感じがいいって、誉めてた。遥汰くんのこと気になるんだ?」

「働いてるイメージが湧かないから」

先生の頭の中には、自由な遙汰くんしかいないんだろうな。実は、彼なりに色々悩んだりしていることもあるのではないかと思ったけど、口に出さなかった。

「まだ遥汰くんは、先生のお家にいるんだよね?」

「ああ。居座ってるよ。家探す気あるんだか。本当この先どうするんだろ、あいつ。フラフラして」と、呆れたように言う。

「そっか。そういえば、就活の話になってね、何していいか分かんないって言ってたな。何やりたいとか、そういう話は聞かないの?」




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