不機嫌な恋なら、先生と

駅はもう目の前だ。

このまま帰っていいのだろうか。

考えて、勇気を出した。

「あのね、ひとつ聞いてもいい?まどかさんって知ってる?たぶん先生の元カノだと思うんだけど。先生と同じ会社の人で」

「まどかさん?会ったことないな。けど確か、会社の人と付き合ってることは前に聞いたことはあるかな」

「そっか」

その一言に、やっぱりあの女性は先生の前の彼女だということに確信を得た。

「そういえば、まどかって、兄貴の小説にも出てたよね?」

「そうなんだよね。元カノの名前が小説に出てくる意味ってあるのかなって考えてしまって。たまたまだよね」

嘘でもたまたまだよって言ってほしかったのに、遙汰くんは神妙な顔つきになる。
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