不機嫌な恋なら、先生と
「まあ、いいか。俺さ、なつめが俺があげたゴマアザラシの本が感動した、ずっと心の支えだったって言ってたとき、悔しいなって思ったんだよ。
昔さ、俺の書いた小説なつめが読んでみたいって言ってくれただろ?
そのときに、少しでもなつめが明るくなって欲しいって思いを込めて書いたんだ。
だけど、渡せなかった。これを読んで、なつめがどう受けとるか自信がなかったから。
だけど、その役割をゴマアザラシにとられたのは、ちょっとね、面白くなかった」
本気で拗ねてるように見えて、
「先生が、こんなに可愛い人だと思わなかった」
「うん。俺も。こんなこと言う奴だと思わなかった」
「先生、これからも末永く、よろしくお願いします」
改めて言うと、先生は、私の頭をぽんっと撫でた。急に真面目な顔つきになる。先生は、見つめることに抵抗がないのか、逸らさない。照れくさかったけど、私も見つめ返した。
「昨日、実家に行って、伝えてきたよ。本も渡してきた。会社も来年度で辞めるつもりで、これからは小説家として生計を立てていくって。結婚したい人もできたから、少し、先になるかもしれないけど、そのつもりでいてくれって」
「会社、辞めるんだ……ていうか、結婚?誰と?」