不機嫌な恋なら、先生と

強引なようだけど、繋ぎ方は優しい。だから、戸惑ってしまう。

「……先生」

「ん?」

「あの、離してください」

「ああ。悪かった。逃げないなら離すよ」

「逃げません」

先生の温もりが手から離れて、ほっとした。

これももしかしたら観察なのかもしれない。

子供だって思われないようにしないと。簡単に動揺してはいけないと、言い聞かす。

駐車場へ行くと、先生の車の助手席に乗り込む。

やっぱり車で二人きりという空間は少し抵抗があった。少しだけ後悔しているけど、これも先生との仲を深めるチャンスだと思うしかない。

この前の誉め殺し作戦は余計に距離をとられてしまったので、今日は、雰囲気良くふるまうことに徹底しよう。

「先生の家で何を手伝えばいいんでしょうか?」と伺う。

「あっ、その前に買い物付き合ってほしいんだ」

「買い物?何か欲しいものでもあるんですか?」

「うん。チョコレートがさ」と、先生は呟くように言った。
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