不機嫌な恋なら、先生と
「えっ?」
「じゃあ食べさせて。それとも、俺がした方がいい?」
囁くように言われ、頬に熱を持つのがわかった。
変なこと考えてしまうのは、艶っぽい表情のせいだ。
違うと、また考える。編集者として、20代女子の意見として聞いてるに違いないと。わかってる。わかってるけど、今その場でそれをするとなると、選べない。
「じゃあ、両方すればいいか。このままでいい?」
断るなんて言えない空気。迷いながら頷くと、先生は生チョコを私の口元に運んだ。
私の今までの異性とのデートで許したのは、手を繋ぐだけ。
そんな私が他人様から、しかも先生から、チョコを食べさせられるなんて無理に決まってる。
でも先生には、大人になったんだって思わせたい。
「口、開けて」と、囁かれる。
この状況の大人な判断は?と、考える頭を麻痺させるようなそんな甘い響きだった。
戸惑いながら口を開けると、チョコと一緒に先生の指先が唇に触れ、舌にも触れた。
「俯かないで、こっち向いて」
言われるまま、先生に顔を向けると、「なんか、このままキスしたくなるね」と、言った。