クールな社長の甘く危険な独占愛

「明日、会社休んでいいから」
社長が言った。

「でも」
「篠山がいるから、大丈夫だ。社員を一人、手伝いに来させるから、引っ越せ」

さつきは黙る。あの部屋に住み続けるのは、精神的に難しい。でも。

「それとも、実家に帰るか」
社長が言った。

さつきは社長の顔を見た。
すごく冷静で、なんの迷いもない。
さつきの心臓がねじれる。

社長が後手に腕をついて、さつきを見上げた。

「さつきがしたいように、すればいい」

「社長は」
さつきは、口を開いた。

「なんであんな馬鹿げたゲームをし始めたんですか?」
「……まあ、退屈してたし」

社長が首をすくめる。

「婚約者もいるっていうから、どれだけ理性と戦えるか見てやろうと思って」
「楽しめました?」
「……どうかな」

社長が小さく笑う。「案外、さつき、頑固なんだもん。好きでもないやつに操をたてて」

「私にキスしたくなったら、社長の負けなんですよね」
「そうだよ」
「一度も、なりませんでした?」

さつきは顔を上げて、社長の瞳を見つめた。

社長の表情は変わらない。
悔しいほどに、まったく。

「なるわけないだろ」
社長が頬を少し上げて、誘惑するような笑みを浮かべた。

「俺は、女に本気になったことがないんだ」
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