クールな社長の甘く危険な独占愛


持っているワンピースは、この季節にはまだ少し薄い気がする。

さつきは鏡の前で桜色のショールを羽織ってみた。

「これしかないし……」
さつきは諦めたようにそう呟くと、エナメルのクラッチバッグを手に取った。

コンタクトをして、髪をゆるくアップした。プチプラのネックレスをしたら、それなりに『清楚』に見える。

「どこに行くのかしら……ほんと、しんどい」
さつきはがっくりと肩を落とした。

ポインテッドトーのハイヒールをはいて、少しよろめく。

「履きなれないから」
さつきは自分を擁護するように、独りでつぶやいた。

エレベーターホールで待つ。

落ち着かない気持ちで、ショールを直したり、髪を触ったりした。

「じゃあ、行こうか」
後ろから声がしたので、さつきは振り返った。

誰……ですか?

さつきは、瞬きした。

「長尾もそんな格好できるんだな」

「社長……ですよね?」
さつきは半信半疑で尋ねた。

「あたりまえだろ」
社長はサングラスを外し、胸ポケットに入れる。
そして、さつきの反応を楽しんでいるような表情を見せた。

黒い細身のジャケットに、ストライプのシャツ。
くるぶし丈の細いパンツに、フラットシューズ。

ビジネススーツのイメージしかないさつきには、まるで別人のように見えた。

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