クールな社長の甘く危険な独占愛


朝起きたら、もう社長がいなかった。さつきは少しほっとして、出社の準備を始める。

広い部屋。ここに一人で住むのは嫌だといった社長の気持ちがわかる気がした。十分に暖かいはずなのに、なぜか肌寒いような気持ちになる。

ジャケットを羽織って、ポケットから再度武則の名刺を取り出し眺める。

仕事を紹介してもらおう。でもお兄さんのところの秘書じゃなくて、違うところの。東京から離れられたら、なおいい。

さつきはそう決心すると、部屋を出た。

秘書室の扉を開けると、もうリカが出社していた。さつきの顔を認めると「長尾さんっ」と駆け寄ってきた。目は大きく見開かれて、好奇心のオーラが半端ない。

手に持っていた布巾を放り投げて、さつきの腕を両手でつかんだ。

「あれ、社長ですよね?!」
「……昨日のは、そうね、たまにあんな風に……」
さつきが言いかけると、リカは首を猛烈に降った。

「違う違う。今日の社長!」
リカが叫んだ。

「俺がどうしたって?」
後ろから声がして、さつきは振り向いた。

「……社長……どうしたんですか?」

さつきは目を疑った。

髪は赤みがかったブラウンに染められ、パーマがかかっている。眼鏡はかけているけれど、マル眼鏡だ。青山あたりを歩いている、芸術家のように見えた。

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