彼は黒で彼女は白〜俺様社長の甘い罠〜
列ぶ事約一時間。なんとか参拝を済ませ、車に乗り込んだ。

「…これからどうしようか?元旦は開いてる店も少ないからな」

初詣以外、特に予定は立てていなかった琉偉が呟く。

確かに、元旦は開いてる店は少ない。…家になら、三が日で食べれるくらいのおせち料理は準備していたが、家に招くのはどうかと思って。

だからと言って、どこかへ行くのも、いい場所が思いつかない。

「…黒澤社長」
「…なぁ白井さん」

「…え?」
「今は会社じやないんだから、黒澤社長って呼ぶのやめないか?」

「…社長は社長ですから」

困った顔で言う雪。

「まぁそうなんだけど、さっき、神社でそう呼ばれてると、周りの目がやけに気になってな」

「…ぁ」

「なんか、悪い事してるみたいで」

そう言って琉偉は苦笑した。

「…えーっと、それでは、なんとお呼びしたら?」
「…下の名前でいい」

…下の名前は、『琉偉』だ。それはわかっているが。…しばらく黙り込んだ雪だったが、意を決してその名を呼んだ。

「…琉偉さん」
「…うん、それでいい」

そう言って微笑む琉偉を見て、雪も安堵したように微笑んだ。

「…あの」
「…ん?」

「…行く場所が決まらないんでしたら、私の家はどうでしょう?…あ‼︎イヤなら「いいの?」

雪の声に琉偉の声が重なる。一瞬止まった雪だったが、それに応えるように頷いた。

「…おせち料理作ってあるんです。ひとりでも、それくらいはしなさいって、母に言われてて、手作りの物もあれば、お惣菜のも混ざってたりするんですけど」
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