二十年目の初恋
秋の日に 8

「きょうは俺が片付けるから優華は座ってて」

「でも悠介、いつも仕事で疲れてるのに手伝ってくれてるから」

「いいよ。丼と茶碗だけだよ。すぐ終わる」

「うん」
 カウンターの椅子に腰掛けたまま悠介が洗い物するのを見ていた。

「悠介、家事上手くなったね」

「そうか? 男も少しは出来ないとな。優華が風邪とかで寝込んだりした時に何も作れないんじゃカッコ悪いから」

「ありがとう。ハムエッグと親子丼は完璧だよね」

「あとカレーも出来るよ。昔キャンプで作ったから」

「じゃあ、その繰り返しで一週間くらいは何とかなるかな?」

「優華、風邪で一週間寝込む気なのか?」

「インフルエンザとか流行ってるし」

「風邪なんて誰かにうつせば治るよ。いっぱいキスして俺にうつしとけ」

「駄目よ。悠介には仕事があるんだから。寝込んだりしたら大変でしょう?」

「俺は大丈夫だよ。バカは風邪ひかないって言うだろ?」

「悠介、勉強出来たじゃない? バカじゃないよ」

「でも風邪は滅多にひかないなぁ。もう何年も」

「悠介、健康なんだ。そういえば昔、健康優良児で表彰されなかった?」

「優華、変なこと覚えてるんだな」

「私、あんまり丈夫じゃなかったから羨ましかったの」

「俺と一緒に居たら優華も健康になるよ。きっと」

「うん。そんな気がしてきた」

「さぁ終わった。優華、きょうはシャワーじゃなくてお風呂に入ろうか? そろそろ寒い季節だからお風呂の準備してくるよ」

「悠介、私がするから」

「大丈夫だよ。優華がここに住むようになるまでは俺が全部やってたの」
 悠介は笑顔でお風呂に行った。

 その夜は二人で湯舟に浸かって温まった。

 悠介の優しさと気遣いに癒されて私は悠介の傍で生きて行くんだな。悠介の腕の中で彼のたくさんの愛に包まれて……。



 目覚めた朝は……。心も体も、ぽっかぽかに温まっていた。外はキーンと張り詰めるほど冷たい空気……。この秋一番の冷え込みになると天気予報で昨夜言っていた。まだ温かいベッドから出たくなくて、お布団の中に潜り込んだ。

「優華、もう起きてたの?」

「今、起きたところ。外、寒そうよ」

「冷え込むって言ってたよな。日曜だし、きょうは寝坊しようか」

「悠介の胸あったかい。ずっとこうしていたい……」
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