二十年目の初恋
結婚 4

 ドレスから着替えて、みんなで食事に行こうということになった。
 実は有名な中華のお店の個室を予約してあったらしい……。

 昔からほとんど親戚付き合いのような二家族だったけれど、これで本当に家族になった。それは親同士も喜んでくれていて、やっぱりこうなる運命だったのかなと思ってしまう。

 食事の間も昔話は出てくるし、みんな笑顔で楽しい時間を過ごした。帰りは母の運転と決まっていたらしく父親たちは嬉しいお酒を味わっていた。

 悠介は飲まなかったけれど……。美味しい中華料理をいただいてお店を出た。

「これから、旅行でしょう?」

「気を付けて、いってらっしゃいね」

「お母さんも運転、気を付けてね」

「優華の運転よりは確かですけど」

「毎日のように乗ってるから上手くなったわよ」

「悠介さん、旅行先で優華に運転させないでね」

「分かってます。まだまだ長生きしたいですからね」

「酷い……」

「優華、楽しんでおいで」

「お父さん、ありがとう」

「悠介、気を付けて行って来いよ」

「うん。きょうはありがとう」

 四人の乗った車を見送って悠介と車に乗った。

「さて、出掛けるか……」

「悠介、ありがとう。お母さんたちを呼んでくれて」

「優華のウェディングドレス見せたかっただけだよ」

「嬉しかった。やっぱり見て貰えて良かったって思うの」

「うん。そうだな。さぁ行こうか」
 笑顔の悠介が車を出した。

 しばらく走って車を入れたのは夜景が綺麗で有名な一流ホテル。

「今夜はここに泊まるよ」

「悠介、ここ有名なホテルだよ。温泉に泊まるんじゃないの?」

「明日チェックアウトしたら温泉に向かうよ。今夜はここでゆっくりしよう」

 悠介が予約していた部屋は最上階のスイート。大きな窓からは遠くまで広がる海が見える。

「こんな高価なお部屋じゃなくて良かったのに」

「夜景が綺麗だって言うし一度泊まってみたかったんだ。近場だからこそ、これから泊まることもないと思うし。もっと日にちが取れれば海外にも行けたのに。俺たちの新婚旅行なんだよ。 最高の思い出にしたいんだ。優華と再会してからクリスマスもバレンタインデーもホワイトデーもなかっただろう? 優華の誕生日も二月一日だし……」

「悠介の誕生日も……」

「俺の誕生日は優華と再会したあの日だから。生涯で最高のプレゼントを貰ったよ。優華というプレゼントをね」

「悠介……」

「夕食を済ませたら夜景の綺麗なバーへ飲みに行こうな」

「それであんなこと言ったのね」

「ホテルのバーで優華とお酒を飲むなんて、これからそんなにいつも出来ることじゃないからな」

「そうね。素敵なこと、たくさんしないとね」

「じゃあ、まずシャワー浴びようか?」

「ホテルでシャワーなんて半年前を思い出すね……」

「同窓会の後ドライブして初めて優華を抱いた日?」
 悠介はそっと私を抱きしめて……
「あの時から、ずっときょうという日が来るのを待ってた。優華と結婚して俺だけの奥さんにする日を……」

「悠介、私こんなに幸せでいいのかな?」

「いいに決まってるだろう。優華、愛してる」

 悠介に唇を塞がれた。悠介のキスは今までのどんなキスより優しくて温かくて癒されて大切にされてるって心から感じさせてくれる。唇が離れても、そのまま抱きしめられたまま。悠介の腕の中で言葉に出来ないくらい幸せだった。

 都会の海を臨む美しい夜景の上品なバーで悠介とグラスを傾けて美味しいお酒を嗜んで二人で部屋に戻った。

「悠介、さっきのバーより、この部屋の方が夜景が綺麗よ」
 窓一面に広がる煌めく夜景の美しさは何物にも替えがたいほどの夢のような世界だった。

「当たり前だろう。最上階のスイートだよ」
 悠介に背中から抱きしめられた。私のウエストに腕が回されて……
「優華、最高の夜にしような」

「悠介と一緒なら、いつでも最高だから」

 夜景を見ていた私は振り向いて悠介の首に腕を回した。悠介からのキス。それは悠介の熱い思いが込められた情熱的なキスだった。

 初めて悠介に抱かれてから半年……。毎日のように愛してくれる悠介に女に生まれて心から良かったと思えた。女として生きていく悦びを教えられた。もう悠介のいない毎日は考えられない。悠介に愛されているからこそ私なんだと思う。

 悠介の腕の中で私は私になる。今でも恥ずかしさはなくならないけれど……。悠介に焦らされて翻弄されて最高の時を待ち焦がれる……。心も体も……私の全てで悠介を愛してる。

「優華」
 そう……。この時の悠介のしなやかな逞しさが好き……。

「悠介……」
 私が溶けてしまいそうになる……。悠介の肌の熱さを感じながら遠退きそうな意識の中で、ただ愛しい名前を呼び続けた……。

 愛する悠介に心も体もこれ以上ないくらい愛された。



 きょうから夫婦としての二人の毎日が始まる。何年何十年続いて行くのか分からないけれど。

 もしかしたら些細なことで喧嘩して顔も見たくない日が来るかもしれない。

 でも悠介となら、きっと乗り越えられる。だってそれは運命だから。悠介と私は一緒に生きる運命なのだから。

 生まれ変わっても、またきっと出会う。きっとまた愛し合う。もう遠回りはしない。



 永遠を誓い合った二人は必ず出会う。どんなに時を超えても……。

 奇跡は起こるものではなく二人の強い想いが起こすものだから……。



          完


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