二十年目の初恋
専業主婦 2

「おっ、良い匂いだ。美味そう」
 椅子に腰掛けながら悠介が言った。

「そうだといいけど」
 隣に座りながら正直ちょっと不安なんですけど……。

「うん。美味い」
 悠介がハンバーグを一口食べて言った。

「良かった」
 安心して私も食べ始めた。

「おかわり」

 目の前に、お茶碗を出される。

「えっ ? もう ?」

 悠介はご飯を三杯も食べてくれた。二人で、いつものように後片付け。食事が済んで二人でソファーに座った。

「ところで大学の方どうなった ?」

「それがね。朝早く理事長が来て、私に理事長秘書になるように言われたの」

「えっ ? 駄目だよ。そんなこと俺が許さない」

「私だって嫌よ。決まってるでしょう。でも今回は断っても辞令は出そうなの」

「選択の余地は無いってこと ?」

「うん。だから大学は辞めるから」

「そうか……」

「副学長も一緒に」

「えっ ? 何で ?」

「母校の女子大から学長として来て欲しいってお話があってね。九月には学長になるらしいの」

「へぇ。また急な話なんだな」

「それでね。私に秘書として来てくれないかって」

「誘われたのか ?」

「うん。どうすればいいと思う ?」

「そうだな。優華はどうしたいんだ ?」

「正直言うと迷ってるの。きょう早退させて貰って二時には帰ってたの。で、お洗濯したり、掃除したり、晩ご飯、何を作ろうかななんて考えてて、専業主婦も悪くないなぁって思ったの。ここで悠介の帰りを待つのも楽しいかなって」

「優華のしたいようにすればいいよ。新しい大学で学長秘書として働くのもいいし、専業主婦になって俺の帰りを待ってくれる。それもいいし」

「うん。考えてみる」
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