二十年目の初恋
一日目 2

「そうか。散歩は気を付けろよ。変な奴に追いかけられたりしないように……。なんか自分で言って心配になって来た。優華、本当に大丈夫か ?」

「もう悠介、心配し過ぎよ。大丈夫だって。はい。早く行かないと遅刻しちゃうわよ」

「うん。行って来るよ。なるべく早く帰ってくるから」

「ちゃんと頑張って仕事して来てね。いってらっしゃい」

「いってきます。あっ、玄関にはちゃんと鍵を掛けてね」

「分かってるって」

 悠介、あんなに心配性だったの ? 意外だったなぁ。でも、ちょっと嬉しかったりするけど。大切に想ってくれてる ? 私も大切に想ってるよ。

 さてと、そういえば梅雨って、どこ行っちゃったんだろう。きょうも良いお天気、お洗濯日和。いい香りに洗い上がった洗濯物を干して、キッチンを片付けて、掃除機をかけて、お昼前には片付いた。

 明日、引っ越しが済んだら、ここが私の居場所。もう一人暮らしのマンションはなくなるんだ……。

 さぁ、お散歩して来よう。ジーンズにスニーカースタイルで。今頃の陽射しは紫外線たっぷりだから黒い日傘を差して。これ雨降りにも使える優れもの。携帯と家の鍵、お財布にハンカチを持って。

 マンションを出て、前の道路を左に進むと公園がある。その先には幼稚園と小学校。その周りには一戸建ての素敵な家が並んでる。

 右に進むと広い通りに出る。昔からの商店街のようで、結構、色んな店舗が並んでる。その通りを歩いてみた。最初に目に付いたのは、ちょっと懐かしい雰囲気の喫茶店。外から、お店の中の様子までは分からない。でもなんとなくコーヒーの味にうるさいマスターが居そうな感じ。

 次に本屋さんがあった。最近よくある大型店にはないあったかい感じ。専門書は置いてないだろうけど、よくある雑誌くらいなら買えそう。文房具も置いてあって、とっさの時には、きっと助かると思う。

 もう少し行くと和菓子屋さん。でも半分はケーキ屋さんみたい。和菓子職人の跡取りは洋菓子に進んだ。みたいな……。後で寄って買って行こう。

 その先は車のショールーム ?

 見たところ後は普通のお宅みたい。その先も、まだ素敵な店舗もあるかもしれないけれど、歩いて買い物するのは、ちょっと辛くなりそう。

 最初の喫茶店まで戻って今度は反対方向に歩いてみた。
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