二十年目の初恋
二十年目の再会 9

少し曇っていた空が、どんどん明るくなって青空が見え出した。

「そういえば悠介、夏の海で迷子になったことあったよね」

「あぁ、それはよく覚えてる」

「ほんのさっきまで、よく見えるところで遊んでた悠介が居なくなったって、おじさんも、おばさんも、青くなって捜して見付からなくて……。それで家の親も一緒に捜しに行って……。結局、悠介、ラジオだかテレビだかの公開放送見ててニコニコで帰って来て」

「そしたら、迷子になってない優華が泣いてた」

「ビーチパラソルの中で一人で待ってたんだけど……。知らない人が私を迷子だと思って心配してくれたみたいで。みんなが声かけてくれて……。お母さんは? とか。あんまり色んな人に声かけられて、だんだん怖くなって……」

「俺、あの時、子供心に反省したんだ。俺が優華を泣かせたんだって思って……。二度と優華を泣かせるようなことはしないって誓ったよ」

「私は、あの時、思ったんだ。悠介は普通の人がしないようなことをきっと、さらっとやってのけるような大人になるんだろうなって。たとえば宇宙飛行士とか総理大臣とか……」

「悪いけど、どっちにも興味はないな。俺は今の仕事に満足してるし、まだまだ出来ることはたくさんある。そう思ってるから。なぁ、優華……」

「うん? なに?」

「俺たち、結婚しないか?」

「えっ?」

「難しく考えなくていいから、俺の傍に居てくれないか?」

「でも……」

「優華の離婚、成立したの一週間前だって言ってたよな。だから六ヶ月は籍を入れることは出来ないけど……。その六ヶ月の間に考えてくれないか? 俺との結婚」

「悠介が嫌いな訳じゃないよ。でも結婚は……。もう自信がない」

「俺は優華を泣かせるようなことはしない。ちゃんと優華を守るから、信じてくれないか?」

「…………」

「この先、俺たち何年、何十年、生きていくのか分からないけど……。俺は優華の傍に居たいし、優華に傍に居て欲しい」

「私なんかでいいの?」

「ば~か。優華がいいって言ってるだろ。今、俺の目の前で泣きそうな顔してる優華と生きていきたいんだ」
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