二十年目の初恋
引っ越し 6

「優華の寝顔を眺めてたよ。小さい頃の優華と同じ顔して眠ってた」

「小さい頃 ?」

「よく一緒にお昼寝させられただろう ? あの頃も優華の寝顔見てたんだ。お前、小さくって可愛くて、ずっと見てても飽きなかった」

「私も見てたよ。悠介の寝顔。遊びに行って疲れて眠っちゃってたことあったよ」

「そうだっけ ? 俺も見られてたんだ」

「この前、温泉に行った時、悠介の寝顔見て、子供の頃と同じ顔して眠ってるって思ったんだから」

「そうなんだ。知らなかったよ」

「来週、家と悠介の家に行くんだよね」

「そうだよ。どうした ? 何か心配なことでもあるのか ?」

「ううん。そうじゃないけど……」

「そうじゃないけど ?」

「反対されるようなことはないと思うけど」

「俺の親も、優華のご両親も賛成してくれる。喜んでくれるよ。そうだろ ?」

「この前、悠介の家に寄った時、おばさん、すごく喜んでくれてたから。でも遊びに来てねとお嫁に来てねは違うと思うし……」

「そりゃあ、そうだけど。家の母さん昔から優華のこと大好きだったから。きっと大喜びしてくれるよ。よく言われたんだぞ。優華ちゃんみたいな女の子が欲しかったって」

「本当 ?」

「こんな時に嘘言っても、しょうがないだろう ?」

「ちょっと気が楽になった。私、緊張してるのかな ?」

「まだ一週間もあるんだぞ。今から緊張しててどうするんだ ?」

「うん……」

「俺と一緒なんだから怖くないだろう ? もし叱られたりするんだったら俺が一人で叱られるから安心しろ」

「悠介……」

「なに ?」

「悠介で良かった。私、本当にそう思ってるからね。悠介を選んで良かったって」

「うん。俺も優華で良かった。本気でそう思ってるよ」

 私たちは、まだベッドで横になったまま……。悠介に優しく腕を引かれ、そっと抱きしめられた。

 大丈夫だよね。私たちは、きっと……。
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