強引同期が甘く豹変しました


「おい」


手にしたままのジョッキが、その声とともにコンッと音を立てた。
中のビールが、ゆらゆら揺れる。


「乾杯する前に飲むなっての」

「あぁ…ごめん」

「お疲れ」


矢沢はそう言うと、ジョッキを私に向けて差し出した。


「お疲れ…様」


言いながらジョッキを当て乾杯すると、小島ちゃんもつられたように私と乾杯してきた。


「つーかさ、小島ちゃん」

「何ですか⁉︎」

「もしかして、俺と飲みに行きたいとか、こいつに頼んだ系?」

「えっ…どうしてですか⁉︎」


えっ、矢沢いきなり何言いだす?
私、まだあんたに何も言ってない…よ?

普通に今日飲みに行かない?って誘っただけなんだけど。


「どうしてって、こいつから飲みに誘ってくるとか初めてだし、小島ちゃんも一緒だし?何でこの3人って思ったっていうか」

「…そっ、そうですよね、不思議になりますよね。実は……そうなんです、私が永井さんに矢沢さんと飲みに行ってみたいってお願いして。それで永井さんが誘ってくれて…」

「そっか。じゃああと一つ。自惚れ覚悟で聞くんだけど」

「何ですか?」

「小島ちゃん、俺のこと狙ってる?」


…わー、質問がど直球だな。そんな涼しい顔で言える?
言えるか…矢沢なら。


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