強引同期が甘く豹変しました


それなのに、あんなことが起きて。
あんな、事故みたいなキスをしてしまって。

私は矢沢と…距離を置いて。


ずっと森さんのことばかりを気にして、矢沢との間に、見えない線を引き続けてきた。


「だからずっと…あいつは…ただの同期だったのに…」


忘れていた記憶が、何故だか蘇っていく。


わざとらしく距離を置いても、矢沢は何度も私に声をかけてきてくれていた。


「たまには飲みいこうぜ」
「メシ奢ってやるから付き合えよ」

って。あんな事故みたいなキスをして気まずかったのは、被害者の矢沢も同じだったはずなのに。
距離を置く私を、変わらず誘ってきてくれた。


なのに私は…いつもそれを、断り続けて。


すると次第に、矢沢が私を飲みに誘ってくることはなくなって。

そしたら何故か、本当に距離が出来たような気がした。


会社では毎日顔は合わすし、口を開けばくだらない言い合いになるようになっていたけど。


矢沢から飲みに行こうと誘われることがなくなると、少し。ほんの少しだけ、寂しくなったっていうか。

ないものねだり?

今まであったことがスパッと全くなくなってしまうと、ほんの少しだけ…寂しかった。


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