強引同期が甘く豹変しました


「どこって…別にどこだっていいでしょ」


正直に紀子の家に泊めてもらってるなんて言ったら、きっとアレコレ言われると思った。

同期の中でも、杉崎とは特に仲の良い矢沢のことだ。

付き合いたてのカップルの邪魔じゃね?とか。
そんなことを言ってきそうだって。


「でも急に泊めてくれるとこなんて、中澤んちくらいしかないだろ」


さすが…よくお分かりで。
もうすでに一泊させていただいてます。


「あ、けど中澤って杉崎とほぼ同棲状態なんだよな?さすがにそんなとこに転がり込むわけにはいかないか。付き合いホヤホヤだし、あいつら」


…やっぱりそうだよね。
いくら同期としての付き合いは長いとはいえ、男女としての‘‘お付き合い’’を始めたばかりの二人には、迷惑でしかないよね。


あぁ…言えない。
昨日泊めてもらったなんて正直に言えない。

つきたくて嘘をつくわけじゃないけど…


「当たり前でしょ?私だってそこんとこはちゃんとわかってますー。だから昨日からビジネスホテルに泊まってるの」


私は矢沢に嘘を言ってしまった。


「どこのホテル?」


だからそう聞き返されて、途端に焦った。

すぐにホテルの名前も思い浮かばなくて。


「どっ、どこって…どこでもいいでしょ」


私は素っ気なく、そう言葉を返すしかなかった。


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