強引同期が甘く豹変しました



「矢沢っ!」


脳内に渦巻いていたたくさんのことが一気にはじけ飛んでいく。


「な、何だよ」

「神!」

「はぁ?」

「神だよ!神様だよ、矢沢様!」


人生最大のピンチだと思っていた。

だけど突如、目の前に救世主が現れてくれた。

それは、長年の付き合いだった、同期の矢沢亮太。


「本当に協力してくれるの⁉︎」


矢沢の考えてくれたその作戦に、乗らない理由なんてなかった。

藁にもすがる思いで私は矢沢を見つめる。


「…おう。でも、そのかわり」

「…り?」

「別れた彼氏のとこから、荷物全部取ってこい」

「えっ」

「やるとなったら手は抜かない。気付かれたら終わりだぞ?同棲してるなら荷物も自然にうちになきゃおかしいだろ」


あぁ、そうか。そうだよね。
お母さん達うちに寄るとか言ってたもんね。


「俺んち、一部屋空いてる部屋あるし。その日までそこで寝泊まりしていいから」

「いっ、いいの⁉︎」

「いいの?って、付き合いたてのこいつらのとこで世話になんのも気が引けるだろ」

「…まぁ…それはそうだけど」

「お。じゃあ、そうと決まれば行くか」

「えっ?行くってどこに?」

「おまえの荷物を取りにだよ」

「今から?」

「善は急げだ。っつーことで話はまとまったから。あ、おまえらまだ鍋食っとく?」


矢沢は言いながら立ち上がり、隣に座っていた杉崎を見下ろす。


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