強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】


「それは、いずれわかると思う」


な、なにそれ! 余計に気になるじゃないの~!

なんだかモヤモヤとしたまま、篤志さんとの食事に向かうことになってしまった。

その途中、ふと桜さんが言っていたことを思い出す。


『霧子さんは、ラプンツェルなんだって』


たしかに、ちょっと似ているかもしれない。

外の世界にあこがれを抱きながら、自分では何もできなくて、王子様の登場を待ち続けている。

心のどこかで、誰かが無理やり、暗い塔から連れ出してくれるのを、夢見ている……。

やだやだ、バカみたい。待っているくらいなら、自分でなんとかするべきでしょう。

とにかく、篤志さんに私の気持ちをわかってもらわなくちゃ。

こんな結婚に意味なんてない。きっと、篤志さんだって幸せになれない。

父に迷惑をかけるのは、とても心苦しいけれど……父のために不幸になるのは、母ひとりでじゅうぶん。

恩はあるけれど、私は私の幸せのために、頑張ることを決めた。

お母さん、どうか見守っていてね。

服の上から、母の形見のネックレスを握った。

そこから力が湧いてくるような、同時に気持ちが落ち着くような、不思議な感じがした。



< 140 / 278 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop